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三枝 ちひろさん

【ふじっころ村・Music Together・NUTS・Fun Fun English】

母である藤野繁子さんが始めた自然体験サークル「ふじっころ村」を継いだ ちひろさん。
また普段は「NUTS」「Music Together」の講師として音楽で、自宅では「英語教室Fun Fun Snglish」の講師として英語で、子ども達と関わる仕事をされています。
パワフルな母との時間、海外での体験、幼稚園教諭、音楽活動などたくさんの体験がちひろさんの考えを作ってきました。
インタビューでは「自由のなかで生まれる自発性」と「共存」という、環境をつくる側で大切にしていることを話してくれました!


やるべきことも、自由に遊ぶ時間も。

環境づくりと仲間づくりをする村


――ふじっころ村は畑や田んぼがあって小さな里山のような環境だなと感じました。
朝から火を炊く大人がいて、支度したり世間話をする子どもたちもいる。

始める前にちひろさんが「みんな村をぐるっと回って、やった方がいい作業や気づいたことを後で教えてね〜」と声かけをしていましたね。

時間になってみんなが藤棚の下に集まると
「今日やったほうがいいこと気づいた人ー?」とホワイトボードを持ってちひろさんがみんなに意見を聞いていました。

トイレのドアが壊れている。蜘蛛の巣がいっぱい張ってる。
いろんな意見が出て、それぞれの目線が面白いなと感じました。
いつもこういうやり方をしているんですか?

最近「村のみんなでやること」と「自由な時間」を作るようになりました。
稲刈りやお茶摘みなど、昔からの文化を伝えるための活動があったり、ふじっころ村の環境を維持するためにやるべきことがあったり。
自分たちの場所を自分たちの手で維持することも大事だからね。
でも仲間作りの場にもなってほしくて、自由な時間も作るようにしました。

自由な時間がちゃんとあるとわかっていると、後で好きなことやれるからとりあえずやるべき事を頑張ろうって。
この環境を使ってあそぶためにもみんなで管理していくというのがわかってくる。

子どもたちと話し合って毎回決めていく感じがいいなと思っています。

――なるほど、自分達が楽しく使う場所を自分達で維持していくのですね。
昔からふじっころ村の運営メンバーだったのですか?

昔は幼稚園の先生をやってて、ふじっころ村はたまに手伝うくらいだった。
結婚して仕事を辞めて子どもができたくらいから事務局を頼まれてそれからいつの間にか毎回出るようになって。
で、母が引退した後は気づいたら中心になってました笑。

スタッフほとんどがフルタイムの本業がある人たちなので、この村を維持するために平日に作業してくれるスタッフはもっといてくれたらありがたいですね。

――この環境を維持するのは確かに人の手が要りますね。
畑や田んぼも池も、、ここだといろんな体験ができますね。

ここは完全に平地だったんですよ。
何もない状態からスタートしたので、最初の10年くらいはかまど作りとか、池作り、そういう村の環境作りが主だったんですね。
そういうのが好きな子は楽しそうにやってましたね。

――環境を自分たちでつくってったんですね。

そうですね。自分たちの居場所作りって感じ。


(つづき)
あと季節ですよね。
前回は、稲穂がそろそろ実ってきたから、かかしを作るって子がいたり。
いい時期になったら稲を刈って、刈ったら干すとか。

――その全行程を続けて体験できることは凄いことだと思います。

そうですね。
「ふじっころ村」というのはこの場所の名前で、ここで開催している会は「だんだん田んぼのガッコウ」という名前があるんです。
だから、田んぼを基本とした1年間を過ごしています。

――季節や植物や食といったいろんなことを連動して体験できますね。

植えて刈って干して脱穀も手でやってから食べます。
できる量は少ないけどやっぱり感無量ですよね。


過程を一緒にやっていきたい

考えを引き出す問いかけを


――見学の最中、ちひろさんは何をするときも子どもたちに「どうやったらいいと思う?」と聞いているのがいちばん印象的でした。

うん。それは意識してます。

べっこう飴も前回やった時全然うまくいかなくて、今回も固まらなかったけどね笑

過程を一緒にやっていきたいのがあるから、前回失敗した時に「ちいねぇ、ちゃんと調べて!」って言われたから、「いやいや、調べてきてよ。みんなが教えてよ」って笑

私が成功する方法を調べてやり方を教えてあげる場所じゃないんですよっていうのを共有してる。

そしたらMくんが、俺は違うとこで(べっこう飴づくりを)やったよ!ってアイディア出してくれたり。
みんなで意見や知識を出しあってやってくのがいいかな。

――ちひろさんは幼稚園教諭をされた後にここでは小学生を相手にしていて、その違いはありますか?

もともとNLC(沼津市子ども会リーダースクラブ)というボランティア団体に入ってたので小学生と関わるのは経験があるんです。
違いでいうと、幼稚園の子たちは素直に感情を出してそれを分かち合うことが楽しいお年頃だから、楽しかったら楽しいし、辛かったら辛い。
そういうことがストレートに出てくる事が多い。

小学生はやっぱ高学年になるほど斜に構えたりする時期ですね。
あと個性ももっとはっきりしてくる。
私のことを「ちいねぇ、ちいねぇ」っていっぱい話しかけてくる子もいるけど、こちらから行かないと会話が生まれない子もいる。
だから、いろんな子に話しかけることは意識してるかな。

小学生ぐらいだと自分の気持ちを我慢してることもきっと多いので、気持ちを素直に出せるような立場でいたいなと思います。
言いやすい環境であってほしいなと。

組み方や道具など、どうしたらいいか考えながら 壊れた椅子を直す

1番大事にしたいのはできる限り大人が口出ししないこと。子どもは自発的にやりたいと思ったことからしか学ばないって思うから。
興味を持ったら子どもからたくさんのアイデアが出てくる。
でも大人が口出した途端に、あ~も~つまんないみたいになることが多いので、気をつけています。

――子ども自身が考える時間を待つわけですね。

そうですね。 子どもを信じてあげる。 言ってあげないとわからない、言ってあげないと絶対怪我するっていう状況の場合、教えてあげたくなるけど、助言されずにやって間違って仮に怪我しちゃっても案外子どもは大人を責めないし。

――なるほど。自分が考えて決めてやった結果だから自分で納得できるんですね。

うん、あと子ども同士で相談したりね。
前回、ツタが伸びてきちゃったからどうする?って聞いたら、邪魔だから切りたいって子もいるし、永遠に伸ばして長縄やりたい子もいたの。
そしたら一人の子が、「身長が低い人はいいけど私ぐらいの背だと歩くたびに邪魔なの」という説明をして切ることになったの。
子ども同士でそうやって話あえるんだから、あえて大人が口出す必要もないなと。

自発的な意見がちゃんと取り上げられると理解すると、あそこがちょっと壊れてるって言いに来てくれるようになる。
そうするとやっぱり物も大事にするし、ここも危険じゃないか?とか。
自分ごとになっていく。

それぞれの過ごし方が許される

畑行く人〜!に張り切って挙手、農作業にいそしむ

――最初に集まって話したあとは、ほんとにみんなそれぞれのペースで過ごしている様子が面白かったです。 この環境が許す雰囲気だなって。
例えば小学校1年生のDくんはずっと仕事して終わったらホワイトボードみて次の仕事探して。
かたや結構ぽーっと座ってる子もいたり。
種を植えてた5年生の子たちは黙々と、土を押さえて最後に土をかけるところまでやって、終わったらお絵描きしてましたね。さっと終わらせてあとは好きなことをする。

それぞれの性格が出てて面白かったです。

だいたい高学年になると斜に構えるというか、そういうのがあるよね。

――わかります。私も通った道です笑

でも絶対休まないで来るからね。
こっちが提案したことに全部「やりたくない」とか言ってても、また来るから笑。
何かそれぞれが来たいと思う理由があるんだろうなって。

箸づくり、ときどきぼーっとしてるのもそれはそれで良し


――来ているメンバーは学校もバラバラですか?

結構バラバラです。同じ学校があんまりいないかも。
自由時間を作っているのも、ここでの横のつながりができるといいなと思って。

――いろんな学校、学年、性格の子がいるからこそ、いろんな意見が出ていいですね。

リーダーと小学生の関わりもそうだけど、長くいる子たちが補ったりすることもあるしね。
作業だけでも仲良くなれないから、自由時間とうまくバランスをとって仲間作りもやっていけたらいいな。

本人の好きなことを尊重していたら、

他の人のことも尊重できるようになった


――中学生リーダーの彼は、小学生の子たちのサポートに回ってましたね。

回れてました!?

――そう感じました。草刈りしてるときにDくんとKちゃんが既にこの辺を刈ってるから自分はこっちかなとか。
ある子が色々お仕事終わったあとに「釣りをやりたい」って言ったけど釣竿探してしばらくうろうろしていたら、リーダーの彼がすすすっと来て、釣りしたい?とか言いながら竿を渡してあげたり。

そういうところ見てもらえてありがたいー。そういう話もいっぱい聞きたい。

彼はほんとに成長したんです。
小学校2年生ぐらいの時は自分の気持ちをコントロールするのが少し難しくて、集団の中だと苦労してたんですよね。
でもふじっころ村に来て火の番をするのがすごく好きで、火の番をするためだけに通い続けて辞めずに来てくれて。

中学生になる時に、リーダーは小学生たちを見守って、時にはサポートする側に回らなきゃいけない。
もし自分のやりたいことだけをやりたいなら一般参加の枠にしよう。どっちがいい?って聞いたときに、自分でリーダーを選んだの。

――役割を自覚してやってらっしゃる感じがしました。

そうか~~(嬉しい)
うん。中学校に入ってぐっと見守る姿勢ができてきたように思います。
前までは全部自分でやってあげちゃったりしてた。
でも、例えばとんかち打つときに自分がやるんじゃなくて、「丸くなってる方で打つんだよ」と言葉で説明するようになったりね。


やり方は常に進行形、いろんな大人が関わることのよさを活かす

玉ねぎの皮染めを広げる、いろんな大人といろんな子ども

――このインタビューをさせていただくにあたって、ちひろさんがお母様について書かれたコラムを拝見しました。
お母様が始められたふじっころ村ですが、いまはどんなメンバーや、やり方をしていますか?

元々うちの母が久松さん(村管理のスタッフ)とその時にいた何人かのメンバーで村を作ったんですよ。
今も、教育者じゃなくてもいいから興味のある大人が関わっている感じ。だから常に進行形ですね。
やってみて問題が出たら、じゃあこういう風に変えようか、という感じ。

――今日もいろんなスタッフさんがいました。

教育畑の人じゃない人が子どもと接するのもいいのかなと思ってる。
教育現場では聞かない言葉が出てくることもあるけど笑、いろんな大人と関わるのも最近は少ないし、いい刺激になってるかなと思ったり。

ときには、〇〇さんこう言ってたの?でもちいねぇは違う気持ち。とか言っちゃう。

大人も人によって考え方が違うんだなってわかってもらうしかないしね。
ルールとか約束事も私が決めてるわけじゃないし。

――みんなが村びとなんですね。
大人も子どもも、経験や感性が違うからこその得意分野がありますね。

そうそう、役割も得意分野も違うから。それでいいかなと思って。

それぞれが生きたいように生きている共存という形



――ちひろさんは英語を教える活動もされていますね。海外に興味があったんですか?

元々、外国にすごく興味があってずっと留学したかった。
オーストラリアに行った時に、いろんなバックグラウンドを持った多様な人種たちがいたのね。
世界にはすごくたくさんの言語があるのに、そこでは英語っていう1つの言語でみんなが共存してるっていうことがすごく刺激的だったんです。

オーストラリアは生き物を大事に守ってる国なんですが、例えばポッサムっていう野生の小動物が公園に行くと人間の隣で普通に過ごしているんですよ。

それぞれが生きたいように生きてて、お互い邪魔してなくて共存している。
この「究極の共存」みたいな感じがすごくいいなと思って。

人間もいろんな人がいて、自分の常識なんて全然通用しないぐらいのさまざまな違いで溢れていて。そんな違いに触れて、受け入れて、それぞれが自分の好きなように生きていけることが、結局自分を守ることにもなるんだって思ったの。

それがずっと今も子どもと接する時に根っこにある考えなんですよね。

無関心とも違うけど、そんなに干渉しすぎない感じがすごく良くて。
あなたはそういう感じね。私とは違うけど、そうね。
それでいいんです。

――ただ共存している。

私とは違うというのははっきり言う。でも認めないわけじゃなく。
私はそうじゃないけど。あなたはそうなんだねっていう。

それが1番自然で、居心地がいいなと思った。


間違いも失敗もない環境を作ればあとは楽しむだけ

Music Together®は1987年にアメリカで幼児教育と心理学の研究に基づいて誕生した幼児音楽プログラム

――子どもと音楽を楽しむMusic Togetherという活動のなかでもその考えが活きていますか?

そうですね。
元々友達と一緒に「NUTS」というユニットで親子向けに音楽活動をやってたんです。オリジナルのネタをやって、自分たちの中では自由にやってたつもりだったんです。

ただMusic Togetherに出会った時に縛りがない音楽の世界観になんかもう(ワアーーキラキラキラ)みたいになって。その時にはじめて自分が「〜でなければいけない」って感情に縛られていたんだって気づいて。
そういうものから解放されて居心地が良くて、すごく好きになって。
そしたらNUTSでの自分の立ち振る舞いも変わったように思います。

――Music Togetherではどんな音楽を扱うんですか?

世界中の曲を使ってるんですよ。 日本の保育で使われる曲って4拍子とか3拍子がほとんどなんですけど、5拍子とか7拍子とか。

――えっ5拍子??どんな感じですか?

ミッションインポッシブルとか。

――ああ!ターンターンタッタッ!

意外と触れてるんですけど頭でちゃんと考えたことがないですよね。

あとロック、カントリー、ジャズ、アフリカンとか、いろんなジャンルの曲を扱う。
親たちがこの曲好き!ってなるので、家でも曲をかけたくなっちゃう。そうすると通ってない兄弟の子たちも歌詞までみんな覚えちゃう。

家庭に音楽環境を作るのが目的のプログラムなので、それぞれの家でCDを聞いていて、レッスンの時に毎回違う遊び方をするんです。

それをお家に持ち帰って子ども発信だったり、お母さん発信で、子育てしながら歌が家の中から生まれてくる。


――年齢別のプログラムがあるんですか?

Music Togetherは異年齢で一緒に楽しむんです。
012歳って、ひと月違うだけでも見せる表れは全然違うからね。
同じ0歳でもぎゅって握りたかったり、口に入れたかったり。

ここの特徴は、とにかく大人が一生懸命、楽しい音楽環境を作る。
この45分間はとにかく音楽の世界を楽しみ、その中で子どもは自由にいていい。

音楽の中で子どもたちが自由に過ごしていると、自然と音楽表現を見せてくれるんです。それを大人たちが見逃さないでキャッチして、それ面白いね!ってみんなで分かち合ったりとか。

こうしましょう!という指導がないんですよね。
先生ではなくて、みんなのアイデアを発信して伝えるナビゲーターの立ち位置がすごく面白いの。

"間違い"が生み出されない空間っていうか。

――なるほど。間違いというものがない空間。

子どもの失敗って結構大人が決めてるから。子どもは別に失敗とは思ってないことも多い。
だから何をやっても間違いでも失敗でもない環境設定を用意してあげたい。

空気は作った、あとはもう好きにやんなさい。ってほうが、親たちも気持ち的にすごい心地いいみたい。

自分の子が迷惑かけないで参加できるかを気にされる親御さんもすごく多いから、どんな状態でも、その子自身が音楽を聞いて楽しんでいる限り全部が正解!みたいなプログラムにしています。
――どんなものも受け入れられる環境だと思うとのびのびできますね

こういう環境だからできる音楽表現っていうのがすごく面白くて。
あ!それいい!じゃあ、それみんなでやろう。
でもやらない子がいてもいい。

楽しそうにはしゃいでるお母さんを見て子どもも嬉しいし、子どものための稽古事じゃなくて、あそこに行くと楽しいよねっていう場をつくっていたい。

――今回、初対面でインタビューをさせていただきましたが、ふじっころ村の見学やMusic Togetherの話を聞いていると、なんだか「そのままでOK!」と言ってもらってるような気分になりました。

それは、誰よりもちひろさんが"ありのまま"でいようとしているようにも感じました。
そんなちひろさんがいるからこそ、子どもたちも自然に思ったことを話し、それぞれがやりたいようにやっている。
「共存」というお話がすっと入ってくるような雰囲気でした。
ありがとうございました。



◎ふじっころ村:沼津市松長 https://www.facebook.com/fujiccoro/

◎Oyako Music Together:三島市 詳しい活動場所は参加予約時に連絡

◎NUTS:三枝ちひろさんと峯松ゆきさんによる音楽リズムあそび教室
https://nutsmusic.jimdofree.com/ instagram:https://www.instagram.com/nutsmusic2011/ ◎Fun Fun English 三島市 自宅での英語教室
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