2023年2月13日矢田 匠さん【月夜のうさぎ天文台】天体好きが高じてなんと自宅に天文台まで設置した、元・高校教師で現・酒屋店主の矢田さん。定期的に、キッズと昔キッズ(大人)を対象に、月や星の観望会を開催されています。驚かされるのは、どんな子どもとも自然に会話される姿。その裏には「知る」「学ぶ」ことへのまっすぐな思いと、子どもたちへのあたたかな視線がありました!——観望会をはじめた経緯を教えてください。 最初は2016年の3月。駅北にある、すまコーヒーさんとコラボして『ナイトカフェムーン』っていうのをやったの。夜遅くまでやってる喫茶店って少ないよね、月見ながらコーヒーなんていいよねとか言って。それから月が見られるような環境作りたいなって思い始めて。望遠鏡が大きいもんで、あれを毎回持ち運んで設営して、、ってのも一苦労だったんだよね。だったら据え付けしたいと。——なるほど。自身で全部設置した望遠鏡やドームなのに、いろんな人を集めて観望会をやろうというのがまたすごいなと思うんです。昭和57年2月、俺が小学校4年生の時に学校に泊まって午前2時の皆既月食を観たのよ。初めて土星と木星と月を見てびっくりして。それから俺はずーっと望遠鏡使って天体の写真を撮り続けてたのね。で、見たいって人には友達でも大人でも見せたりしてたから違和感はなかったかな。年齢は関係ない!「その人」が何を知りたいかを汲み取る——私は何回も3歳の息子と一緒に観望会に参加させていただいています。すごいなと感じたのが、矢田さんの子どもとの自然な会話。3歳の子にもわかりやすく望遠鏡の見方を教えてくださって、小学生の天体に詳しい子には星の名前を言いながら盛り上がっている。子どもって1歳違うだけで知識も態度も違うから、年齢層の幅のあるそれぞれの子どもたちに対して、変わらず自然なやりとりができるってすごいなと思ったんです。それで言うと、3歳だから、小学生だから、高校生だから、30歳だから、70歳だからっていうのはあんまり無いんだよね。自分でもよくわかんないんだけど、ちゃんと話成立できちゃうんだよね。——じゃあ、あんまり意識してそうしてるわけではないんですね。北海道で高校の教員をやってたときがあったんだけど、そのときも、観たいって子達に土星とか木星とか月とか見せてたから、なんとなく「こういうこと見たいんだよね」とか「こういうこと思ってるよね」っていうのがわかるんだよね。——なるほど、それぞれの視点を汲んでるのですね。そうね。あと、小学生や幼稚園の子たちって言葉や表現がうまくできないだけで、例えば天体を観察するってことに関しては、望遠鏡で天体を観たことのない大人と3歳の子は俺は同質だと思ってる。——たしかに、天体を観るということについてはどちらも”はじめて”なわけですね。そうね。年齢の差があるだけで初めて望遠鏡を使うなら同じレベルだから、ちゃんと教えてあげればいい。特に小さい子ほどスポンジのように知識を吸収してくじゃない?できた!を認めて、任務を託してる人に教えられるように教わるから、質問がどんどん湧いてくる——そうですね。小学生のお弟子さんもいらっしゃいますよね。先日の観望会のときには「私は宇宙飛行士になるから」って言っている子もいました。あの子は「毎日のようにのところ寄りたいと娘が言っています。」ってお父さんからメールが来るんだよ。一番弟子の子は小学2年生ですよ。二番弟子の子もね、双眼鏡の扱い方を教えて、見えなかった人たちに教えてあげてって言ったら、ちゃんと相手の様子を見ながら教えてたの。そのあと作文で「双眼鏡の見方がわからなかった人に教えてあげました。そして友達ができました。矢田さんという人に褒められて弟子2号になりました。嬉しかったです」って。きっと彼としてもすごい出来事だったんだし、友達ができましたって書いてくれるの嬉しいじゃない。こういうことで自信がつく。ちゃんと大人が評価してあげればね。今、ある学校の備品の望遠鏡を預かっててメンテナンスもやってるんだけど、私立でも公立の学校でも、先生たちは異動しちゃったりやめちゃったりすることもあるから、望遠鏡みたいな専門性の高いものを使っていく方法としてはひとつは外部の人間に頼む。もうひとつは子ども同士で引き継いでいく。俺の理想としては後者かな。俺が弟子に教える時は「君が学校に行った時に他の子や次の世代に教えてくんだよ」っていうところまでワンセットにして教えておくのね。そうすると全然違うじゃない。——確かに”人にも教えるんだ”って思ったら、聞き方も変わってきます。そうなの。そうすると、どういうことを聞いたらいいかなって考える。それって勉強だよね。——そうですね。これ聞かれたら自分がわかんないぞ。みたいなのを考えながら。そう。だから学校の先生でも親でもない俺が「次はあなたが教えるんだから聞いとけよ」って言って、子ども同士が使い方をどんどん継いでったら、興味を持って関わる人たちも増えていくし。子どもたちにやりたいことがあって、大人たちがそれをどうサポートするか。望遠鏡が重かったら先生に持ってもらってさ。でも扱うのはときには子どもの方がうまかったり(笑)。学校って、そういう場じゃん。——すごく面白そう。そういう子たちに関わってたら先生たちも楽しくなりそうですね。大人もそういうところから教わることあると思う。理系も文系も密接にリンクさせながら興味・関心を育てたい——前に論文を紹介してくださったじゃないですか。あれすごい面白くって。月といえば「うさぎが餅つき」だけど、なぜそうなったのかを研究した論文で、JAXAの方が書いてる。https://www.isas.jaxa.jp/home/research-portal/gateway/2022/0203/ お月様に本当にうさぎが住んでるとはみんな思ってないのだけど、そこに物語をつける。感性から興味が生まれてくる。興味は科学の分野に広がっていって、ついには月に行こうという話になる。そのいわゆる「分野」の絡み合う複合性が面白くて。俺、あの論文は究極の形だと思ってるの。天体って言ったら一般的には理科。でも理系だから文系だからじゃなくて、密接なリンクがあるんだよね。——そうですよね。物語にしろ科学的な謎にしろ、”好奇心の発生”みたいなものを持ち続けることで、より深めていけるということをすごく感じたので、面白いなって。リアクションの違いは生きてきた年数の違いから!?——矢田さんを見ていると、人が好奇心や関心を持つということに対して、いろんな形でバックアップされてるんだろうなと感じます。自分が月を見るより、人が見た時のリアクションの方が楽しいっておっしゃってましたね。そうそう。まず子どもに先に見せてやりたいって思うのが大人の感覚だと思うのよ。でも子どもに先に見させると、ものすごいしょっぱい対応なの(笑)。何のリアクションもしない。でもそのあと大人が見ると「ひゃーっ」てなって、そのリアクションを見てた子たちが「もう1回!」ってなる。あの光景ってすっごい面白くて。なんでリアクションの違いがあるんだろうって考えたら、やっぱね、生きてきた年数だよね。その天体がどれぐらい遠くにあって、それが見えるのがどれくらいすごいことなのか。50年生きてきた人と5年の人の尺度は全部違う。そういうことが観望会通じてわかってきたから、先に大人に見てもらってリアクションとってもらってから子ども見た方がいいやと思って。一度ハマり方がわかると、次も深くハマれる―― ここでそんな体験をしたら、宇宙や天体のことをもっと知りたくなりますね。子どもたちからもいろんな質問がありますか?そうね。観望会で観ておしまいにしないで、どうしてこうなってるんだろうと、あれはなんなんだろうとかって思ったら図書館行って調べておいでって言うのね。――なるほど、”知り方”だけ教えるんですね。知ってる人から答えを聞けば早いんだよ。でもその人いなくなっちゃったらどうしていいかがわかんなくなっちゃうじゃん。だから自分でちょっと右往左往をしてみるっていうのが1番大事。それに、楽しいじゃん試行錯誤って。俺に星を教えてくれた石谷(いしたに)先生って方が、「なんでもいいから1個好きになってハマり込んでみる。そうすると、別のこともハマり方が1回目と同質になる」って言ってたの。ハマり方を覚えたら2回目の方が上達力が早い。——なんだかわかる気がします。確かに1度深掘りした経験があると、何か他の興味の向いた時に、図書館でこういうとこ見てみたらいいかもというような勘が働く感じはありますね。そうそう。図書館に入った瞬間に、こっちじゃなくてあっちの棚に行くと自分が求めてるものが探せそうだなっていう勘がつくじゃない。一度自分の力で試行錯誤した経験があるからこそ、次にも活かせるんだよ。その過程の中で、ポイントになる語彙が出てきたり調べ方がわかってくる。だから図書館行って見といでって、ちょっと突き離しちゃう。でも何も情報がないと難しいから、「図書館の中でもちょっと難しいことが書いてある本に書いてある」とか、ヒントを入れといてあげる。で、親は責任持って試行錯誤を最後まで見守っててやるのがいいんじゃないかなと思ってる。"親が嫌いなピーマンは食卓に出てこない"を考える 大人が面白がると子どもに「楽しい」が伝播する!——大人でも月を望遠鏡で見たことある人なんて少ないから、先生みたいに教えてあげることはできないけれど一緒に調べていくようなことができればいいのかな。そうそう、親も子どもも自分事にしてく。そうすると見えてくるものが変わってくる。子どもは、親がどれだけ自分と一緒に楽しんでるかを見てるよね。お母さんの嫌いなピーマンは食卓に出てこないから子どもも食べないことになっちゃう、みたいなことはいろんな分野で言えることなんだよね。それは俺は自分の母親で体験してるんだ。昆虫でも星でも何か興味持った時に一緒に調べたり、楽しんでくれた。アゲハ蝶の芋虫飼うって言ったら、みかんの木買ってきてくれたりね(アゲハ蝶はみかんの葉を好む)。多分天文台に来てる子たちの親は、少なからずなにかしら興味があるとか、昔好きだったんだよね。子どもが夜に勝手に1人で来れるわけないんだから、お母さんとかお父さんとかに連れてきてもらわなきゃいけない。そうすると、その足になってくれる人が、どれだけ子どもと一緒に楽しんでるかっていうのが、今の話に直結するんだよね。「楽しい」は人に伝播するから、親が一緒になって楽しんでくれれば子どももどんどん楽しくなっていくよね。感性を大切にすることで学びが面白くなる、だから続けられる――天文台に来てから、息子は空を見上げて月を見るのが生活の一部になりました。幼稚園でも朝や帰りに見つけては先生やお友達に伝えているそうです。小さい頃から触れさせてもらったからこそ、彼の中で月を見るのが当たり前になった感じがします。ピアノ、習字、英語、3歳からやりましたってのはよく聞くけど、3歳から月見てます。ってのはあんまりないじゃん。理系のものって、小さいうちから習い事で通うようなものは少ないよね。――私も理系の出身ですが、触れる機会がないままに最初に出会うのが”勉強”としてだと、拒否反応が起きちゃう子も多いかもしれないですね。先の論文の話でもそうですが、物語としてだろうと風景としてだろうと、興味を持った上で観察したり学んだりすると入り方が全然違いますよね。“面白いもの”として出会えたいいよね。面白くないと続かないしね。月食観望会の時に、色は絶対に言わないようにしたのも、大人が勝手に文献とかの情報を言わないっていうポリシーが根底にあるから。10人が10通りの色で思ったって正解だと思う。こんな感じだったとか、こんなふうだったっていうのは尊重してあげていいじゃん。あれが土星だよ、あれが木星だよとは言うけど、縞模様になってるって説明されるのと、なんか線が見える気がするって自分で気づくの、どっちが記憶に残るかって言ったら、自分で見つけた方だと思うんだ。過程がなにより大事だからさ。結論までに不要なことは先に消去しちゃいましょう。ってことをしていると、実際に観察してないけど文献だけで知った気になっちゃう。望遠鏡も触ったことがない。そうすると、台風ばっかの季節に空で星座を探せって言ってきたりね。夜中にしか見えないぞとか。データだけ見てると変なところを見落としちゃう。地域で子どもも学校も育てていきたい今、学校って外部の人に野球とかバスケット、剣道とかのスポーツを教えてもらう形になりつつあるじゃない。それがスポーツ分野だけじゃなくて、書道とか音楽もそうだし、理科のこともそうだし、生物のこともそうなってきてる。地域の人にも学校に来てもらって次の世代に教えてく。地域の人たちも含めてどういう位置づけの学校なのかっていうことで、全てのことも変わってくる。学校がなんとかなれば、街づくりなんてもう簡単にできるから。年少さんから小学校6年生までの間にゴミの分別を教えてごらん。大人になってから楽だよ。大人になってからあーですこうですって言われてもなかなか直せない。小さいうちにかっちりやっておけば、あとは自然にそうやるもん。だから、街づくりは学校や教育からって根本的に思ってる。うちに子どもはいないんだけど、人の子どもの成長を勝手に楽しんで、自分の子どものように育てて。そうやってかないと、親も多分手が回らないし、子どももあちこちからいろんな圧力かかってストレス抱えてるし。だから、うちに来て息抜きになってくれれば。で楽しいことできればいいだろうしさ。その隣で親が缶ビール飲んでへえとかって言ってる光景もいいよね。*編集後記*矢田さんと話していると、どんな会話も広げてくれるのでいつまでも居座りたくなります。このインタビューで、矢田さんがいろんな見方を持っていることがわかりました。地域に住む大人としてのあたたかな目線、教育者としての学びを深める目線、自分の「好き」を共有したいという一個人としての目線 etc...「多角的な視点から相手を良く見る」ということが、どんな子も(大人も)自然体で対応できちゃう器の大きさにつながっているんだと感じました。ありがとうございました!酒の矢田 住所:沼津市岡宮375−14HP:http://www.sakenoyata.com/ instagram:@sakenoyata https://www.instagram.com/sakenoyata/ 月夜のうさぎ天文台 instagram:@moonrabbitobservatoryhttps://www.instagram.com/moonrabbitobservatory/
【月夜のうさぎ天文台】天体好きが高じてなんと自宅に天文台まで設置した、元・高校教師で現・酒屋店主の矢田さん。定期的に、キッズと昔キッズ(大人)を対象に、月や星の観望会を開催されています。驚かされるのは、どんな子どもとも自然に会話される姿。その裏には「知る」「学ぶ」ことへのまっすぐな思いと、子どもたちへのあたたかな視線がありました!——観望会をはじめた経緯を教えてください。 最初は2016年の3月。駅北にある、すまコーヒーさんとコラボして『ナイトカフェムーン』っていうのをやったの。夜遅くまでやってる喫茶店って少ないよね、月見ながらコーヒーなんていいよねとか言って。それから月が見られるような環境作りたいなって思い始めて。望遠鏡が大きいもんで、あれを毎回持ち運んで設営して、、ってのも一苦労だったんだよね。だったら据え付けしたいと。——なるほど。自身で全部設置した望遠鏡やドームなのに、いろんな人を集めて観望会をやろうというのがまたすごいなと思うんです。昭和57年2月、俺が小学校4年生の時に学校に泊まって午前2時の皆既月食を観たのよ。初めて土星と木星と月を見てびっくりして。それから俺はずーっと望遠鏡使って天体の写真を撮り続けてたのね。で、見たいって人には友達でも大人でも見せたりしてたから違和感はなかったかな。年齢は関係ない!「その人」が何を知りたいかを汲み取る——私は何回も3歳の息子と一緒に観望会に参加させていただいています。すごいなと感じたのが、矢田さんの子どもとの自然な会話。3歳の子にもわかりやすく望遠鏡の見方を教えてくださって、小学生の天体に詳しい子には星の名前を言いながら盛り上がっている。子どもって1歳違うだけで知識も態度も違うから、年齢層の幅のあるそれぞれの子どもたちに対して、変わらず自然なやりとりができるってすごいなと思ったんです。それで言うと、3歳だから、小学生だから、高校生だから、30歳だから、70歳だからっていうのはあんまり無いんだよね。自分でもよくわかんないんだけど、ちゃんと話成立できちゃうんだよね。——じゃあ、あんまり意識してそうしてるわけではないんですね。北海道で高校の教員をやってたときがあったんだけど、そのときも、観たいって子達に土星とか木星とか月とか見せてたから、なんとなく「こういうこと見たいんだよね」とか「こういうこと思ってるよね」っていうのがわかるんだよね。——なるほど、それぞれの視点を汲んでるのですね。そうね。あと、小学生や幼稚園の子たちって言葉や表現がうまくできないだけで、例えば天体を観察するってことに関しては、望遠鏡で天体を観たことのない大人と3歳の子は俺は同質だと思ってる。——たしかに、天体を観るということについてはどちらも”はじめて”なわけですね。そうね。年齢の差があるだけで初めて望遠鏡を使うなら同じレベルだから、ちゃんと教えてあげればいい。特に小さい子ほどスポンジのように知識を吸収してくじゃない?できた!を認めて、任務を託してる人に教えられるように教わるから、質問がどんどん湧いてくる——そうですね。小学生のお弟子さんもいらっしゃいますよね。先日の観望会のときには「私は宇宙飛行士になるから」って言っている子もいました。あの子は「毎日のようにのところ寄りたいと娘が言っています。」ってお父さんからメールが来るんだよ。一番弟子の子は小学2年生ですよ。二番弟子の子もね、双眼鏡の扱い方を教えて、見えなかった人たちに教えてあげてって言ったら、ちゃんと相手の様子を見ながら教えてたの。そのあと作文で「双眼鏡の見方がわからなかった人に教えてあげました。そして友達ができました。矢田さんという人に褒められて弟子2号になりました。嬉しかったです」って。きっと彼としてもすごい出来事だったんだし、友達ができましたって書いてくれるの嬉しいじゃない。こういうことで自信がつく。ちゃんと大人が評価してあげればね。今、ある学校の備品の望遠鏡を預かっててメンテナンスもやってるんだけど、私立でも公立の学校でも、先生たちは異動しちゃったりやめちゃったりすることもあるから、望遠鏡みたいな専門性の高いものを使っていく方法としてはひとつは外部の人間に頼む。もうひとつは子ども同士で引き継いでいく。俺の理想としては後者かな。俺が弟子に教える時は「君が学校に行った時に他の子や次の世代に教えてくんだよ」っていうところまでワンセットにして教えておくのね。そうすると全然違うじゃない。——確かに”人にも教えるんだ”って思ったら、聞き方も変わってきます。そうなの。そうすると、どういうことを聞いたらいいかなって考える。それって勉強だよね。——そうですね。これ聞かれたら自分がわかんないぞ。みたいなのを考えながら。そう。だから学校の先生でも親でもない俺が「次はあなたが教えるんだから聞いとけよ」って言って、子ども同士が使い方をどんどん継いでったら、興味を持って関わる人たちも増えていくし。子どもたちにやりたいことがあって、大人たちがそれをどうサポートするか。望遠鏡が重かったら先生に持ってもらってさ。でも扱うのはときには子どもの方がうまかったり(笑)。学校って、そういう場じゃん。——すごく面白そう。そういう子たちに関わってたら先生たちも楽しくなりそうですね。大人もそういうところから教わることあると思う。理系も文系も密接にリンクさせながら興味・関心を育てたい——前に論文を紹介してくださったじゃないですか。あれすごい面白くって。月といえば「うさぎが餅つき」だけど、なぜそうなったのかを研究した論文で、JAXAの方が書いてる。https://www.isas.jaxa.jp/home/research-portal/gateway/2022/0203/ お月様に本当にうさぎが住んでるとはみんな思ってないのだけど、そこに物語をつける。感性から興味が生まれてくる。興味は科学の分野に広がっていって、ついには月に行こうという話になる。そのいわゆる「分野」の絡み合う複合性が面白くて。俺、あの論文は究極の形だと思ってるの。天体って言ったら一般的には理科。でも理系だから文系だからじゃなくて、密接なリンクがあるんだよね。——そうですよね。物語にしろ科学的な謎にしろ、”好奇心の発生”みたいなものを持ち続けることで、より深めていけるということをすごく感じたので、面白いなって。リアクションの違いは生きてきた年数の違いから!?——矢田さんを見ていると、人が好奇心や関心を持つということに対して、いろんな形でバックアップされてるんだろうなと感じます。自分が月を見るより、人が見た時のリアクションの方が楽しいっておっしゃってましたね。そうそう。まず子どもに先に見せてやりたいって思うのが大人の感覚だと思うのよ。でも子どもに先に見させると、ものすごいしょっぱい対応なの(笑)。何のリアクションもしない。でもそのあと大人が見ると「ひゃーっ」てなって、そのリアクションを見てた子たちが「もう1回!」ってなる。あの光景ってすっごい面白くて。なんでリアクションの違いがあるんだろうって考えたら、やっぱね、生きてきた年数だよね。その天体がどれぐらい遠くにあって、それが見えるのがどれくらいすごいことなのか。50年生きてきた人と5年の人の尺度は全部違う。そういうことが観望会通じてわかってきたから、先に大人に見てもらってリアクションとってもらってから子ども見た方がいいやと思って。一度ハマり方がわかると、次も深くハマれる―― ここでそんな体験をしたら、宇宙や天体のことをもっと知りたくなりますね。子どもたちからもいろんな質問がありますか?そうね。観望会で観ておしまいにしないで、どうしてこうなってるんだろうと、あれはなんなんだろうとかって思ったら図書館行って調べておいでって言うのね。――なるほど、”知り方”だけ教えるんですね。知ってる人から答えを聞けば早いんだよ。でもその人いなくなっちゃったらどうしていいかがわかんなくなっちゃうじゃん。だから自分でちょっと右往左往をしてみるっていうのが1番大事。それに、楽しいじゃん試行錯誤って。俺に星を教えてくれた石谷(いしたに)先生って方が、「なんでもいいから1個好きになってハマり込んでみる。そうすると、別のこともハマり方が1回目と同質になる」って言ってたの。ハマり方を覚えたら2回目の方が上達力が早い。——なんだかわかる気がします。確かに1度深掘りした経験があると、何か他の興味の向いた時に、図書館でこういうとこ見てみたらいいかもというような勘が働く感じはありますね。そうそう。図書館に入った瞬間に、こっちじゃなくてあっちの棚に行くと自分が求めてるものが探せそうだなっていう勘がつくじゃない。一度自分の力で試行錯誤した経験があるからこそ、次にも活かせるんだよ。その過程の中で、ポイントになる語彙が出てきたり調べ方がわかってくる。だから図書館行って見といでって、ちょっと突き離しちゃう。でも何も情報がないと難しいから、「図書館の中でもちょっと難しいことが書いてある本に書いてある」とか、ヒントを入れといてあげる。で、親は責任持って試行錯誤を最後まで見守っててやるのがいいんじゃないかなと思ってる。"親が嫌いなピーマンは食卓に出てこない"を考える 大人が面白がると子どもに「楽しい」が伝播する!——大人でも月を望遠鏡で見たことある人なんて少ないから、先生みたいに教えてあげることはできないけれど一緒に調べていくようなことができればいいのかな。そうそう、親も子どもも自分事にしてく。そうすると見えてくるものが変わってくる。子どもは、親がどれだけ自分と一緒に楽しんでるかを見てるよね。お母さんの嫌いなピーマンは食卓に出てこないから子どもも食べないことになっちゃう、みたいなことはいろんな分野で言えることなんだよね。それは俺は自分の母親で体験してるんだ。昆虫でも星でも何か興味持った時に一緒に調べたり、楽しんでくれた。アゲハ蝶の芋虫飼うって言ったら、みかんの木買ってきてくれたりね(アゲハ蝶はみかんの葉を好む)。多分天文台に来てる子たちの親は、少なからずなにかしら興味があるとか、昔好きだったんだよね。子どもが夜に勝手に1人で来れるわけないんだから、お母さんとかお父さんとかに連れてきてもらわなきゃいけない。そうすると、その足になってくれる人が、どれだけ子どもと一緒に楽しんでるかっていうのが、今の話に直結するんだよね。「楽しい」は人に伝播するから、親が一緒になって楽しんでくれれば子どももどんどん楽しくなっていくよね。感性を大切にすることで学びが面白くなる、だから続けられる――天文台に来てから、息子は空を見上げて月を見るのが生活の一部になりました。幼稚園でも朝や帰りに見つけては先生やお友達に伝えているそうです。小さい頃から触れさせてもらったからこそ、彼の中で月を見るのが当たり前になった感じがします。ピアノ、習字、英語、3歳からやりましたってのはよく聞くけど、3歳から月見てます。ってのはあんまりないじゃん。理系のものって、小さいうちから習い事で通うようなものは少ないよね。――私も理系の出身ですが、触れる機会がないままに最初に出会うのが”勉強”としてだと、拒否反応が起きちゃう子も多いかもしれないですね。先の論文の話でもそうですが、物語としてだろうと風景としてだろうと、興味を持った上で観察したり学んだりすると入り方が全然違いますよね。“面白いもの”として出会えたいいよね。面白くないと続かないしね。月食観望会の時に、色は絶対に言わないようにしたのも、大人が勝手に文献とかの情報を言わないっていうポリシーが根底にあるから。10人が10通りの色で思ったって正解だと思う。こんな感じだったとか、こんなふうだったっていうのは尊重してあげていいじゃん。あれが土星だよ、あれが木星だよとは言うけど、縞模様になってるって説明されるのと、なんか線が見える気がするって自分で気づくの、どっちが記憶に残るかって言ったら、自分で見つけた方だと思うんだ。過程がなにより大事だからさ。結論までに不要なことは先に消去しちゃいましょう。ってことをしていると、実際に観察してないけど文献だけで知った気になっちゃう。望遠鏡も触ったことがない。そうすると、台風ばっかの季節に空で星座を探せって言ってきたりね。夜中にしか見えないぞとか。データだけ見てると変なところを見落としちゃう。地域で子どもも学校も育てていきたい今、学校って外部の人に野球とかバスケット、剣道とかのスポーツを教えてもらう形になりつつあるじゃない。それがスポーツ分野だけじゃなくて、書道とか音楽もそうだし、理科のこともそうだし、生物のこともそうなってきてる。地域の人にも学校に来てもらって次の世代に教えてく。地域の人たちも含めてどういう位置づけの学校なのかっていうことで、全てのことも変わってくる。学校がなんとかなれば、街づくりなんてもう簡単にできるから。年少さんから小学校6年生までの間にゴミの分別を教えてごらん。大人になってから楽だよ。大人になってからあーですこうですって言われてもなかなか直せない。小さいうちにかっちりやっておけば、あとは自然にそうやるもん。だから、街づくりは学校や教育からって根本的に思ってる。うちに子どもはいないんだけど、人の子どもの成長を勝手に楽しんで、自分の子どものように育てて。そうやってかないと、親も多分手が回らないし、子どももあちこちからいろんな圧力かかってストレス抱えてるし。だから、うちに来て息抜きになってくれれば。で楽しいことできればいいだろうしさ。その隣で親が缶ビール飲んでへえとかって言ってる光景もいいよね。*編集後記*矢田さんと話していると、どんな会話も広げてくれるのでいつまでも居座りたくなります。このインタビューで、矢田さんがいろんな見方を持っていることがわかりました。地域に住む大人としてのあたたかな目線、教育者としての学びを深める目線、自分の「好き」を共有したいという一個人としての目線 etc...「多角的な視点から相手を良く見る」ということが、どんな子も(大人も)自然体で対応できちゃう器の大きさにつながっているんだと感じました。ありがとうございました!酒の矢田 住所:沼津市岡宮375−14HP:http://www.sakenoyata.com/ instagram:@sakenoyata https://www.instagram.com/sakenoyata/ 月夜のうさぎ天文台 instagram:@moonrabbitobservatoryhttps://www.instagram.com/moonrabbitobservatory/
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