【(有)サンディオス・みらたね】
父からデザイン会社を継ぎ、経営者となった津賀さん。 2018年からはじめた教育部門の事業の軸は、これからを生きる子どもたちへのまなざし。
そして児童養護施設の子どもたちと社会の接点をつくる活動も。 幅広く活動される津賀さんの思いを伺いました。
キーワードは、大人も子どもも「面白がる」こと!
【想像力を持って地域や人の未来を作っていく。 新たなビジョンが子どもに関わるきっかけに】
───サンディオスはデザイン会社と思っていたのですが、教育部門の事業もやっていると知ってお話を伺いにやってまいりました。
どんなことをしているのですか?
今事業としてやっているのはロボ団とFORESTEの2つです。
→(※FORESTE主宰の鈴木歩美さんのインタビューは次回お届けします)
────ロボ団は何年前からですか?(取材時2022年9月)
4年前からかな。
────それは始めるきっかけがなにかあったんですか?
それはねえ、会社を経営していて、経営の面白さと難しさっていうのすごく感じている時期だったんですよね。
当時、代表になって5年くらい経ってて。
会社を承継したのと子どもを産んだのが同時期だったから、子どもが4歳くらいに成長していたので少し余裕が出てきたんです。 そこでうちの元々やってる事業体の強さとか弱さとか、今後いまのやり方だけで事業を行っていくのはちょっと自分が息切れするなっていう感覚に向き合おうと思ったんですよね。
それで、そもそもなんでこの会社をやっていくのかっていうところに立ち帰って。
父親から会社を継いだ時点で、自分の人生の大半をこの仕事に費やしていくことが決まったのであれば、自分の情熱をちゃんとアウトプットできるものを事業構造の中に入れたいっていう気持ちが出てきたんです。
で、「想像力を持って地域や人の未来を作っていこう」っていう言葉が自分に降りてきた時、私が自分の人生を持ってして会社をやる意味をちょっとここに見出せたら、自分はものすごい幸せだなって思えるなって。
だったらそれに向かっていけば、広告代理であるとかグラフィックのデザインであるとかっていうこと以外にも、みんな同じ目指すゴールであれば、別に何やってもいいなと思って。
―――ビジョンの芯ができたことで、事業のかたちに幅が出たんですね。
うんうん。
その時にじゃあ何やろうかなって時に思い浮かんだのが子どもだったんですね~。
実はそんなにすごく子どもが好き!だったわけではないんですけど笑
高齢出産で3つ子っていうことで、3人とも生まれてくるかわからないとか、いろんなハイリスクとか、考え直した方がいいみたいなことも言われながら、妊娠を経過していってたので、それが今、笑い合っていられてるということ自体が、もうそれだけでいいな!と思えたんですよね。
だから、子どもに期待しすぎてるところもなくて、自分が自分の子どもを見てるんだけど、ちょっと親戚のおばちゃん的に見てるところもあって、ああよくできたわねとか笑
そしたら散々子ども好きじゃ無いとか言ってたくせに、なんだか可愛くなっちゃったんですよ笑
【自分で考える力を培う〜プログラミングの能動性〜】
────子どもに関わる事業を考えたときに、具体的にどんなことを目指したんですか?
これだけ時代の流れが早く過ぎ去っていくところを生きていると、間違いなく私たちが生きていた時代や世界と変わった世の中で子どもは生きることになると感じていて。
親が知らない世界を子どもは歩むから親がどうこう導くというよりは、いかに自分たちで自分の力を発揮するか。何か解決しないといけないことがあった時にどうしたらいいかを自分たちで考えて、自分たちで乗り越えていけるのが大事かなと思ったの。
―――未来を予測できないからこそ、その時々で判断して行動する力が大切ですね。
うん。自分の道を自分で切り開ける力っていうものを、子ども自身で楽しみながら蓄えられたら最高だなって思ったんです。
―――楽しみながらっていうのがいいなあ。
そうそう。
それで、プログラミングって2020年度に小学校の教育課程で始まってるんですけれど、その2年前くらいからそういう風に(教育課程に)なるよっていうの聞こえてきていたから、じゃあ、ちょっと事業化してみて、プログラミングの面白さを子どもが知って探求しながらやっていく姿を想像すると、すごくワクワクするなと思って踏み込んでいったっていうのが流れです。
────4年の活動の中で子供の様子だとか、気づいたことってありますか。
プログラミングって最近スタンダードになってきたものだから、子どもにとってどういう楽しさがあるのかなというのも知りたいです。
ロボットプログラミング教室っていう領域なんですけど、始める時に別に私ゲーマーを生み出したいわけじゃないっていう気持ちはあったんですよ。
ものによるけれど一般的にゲームは受動性が高いものと感じることもあって。
それで言うとプログラミングってすごく能動性が高いんですよね。
ゲームにハマっていくような感覚で、自分で考えてトライ&エラーを起こしてやっていく能動性の高い体験の、一番最初としてはすごくいい教育…
いや、 ”遊び” だなって思ってる感覚は今見てて思いますね。
────ゲーム(受動性の高い種類のもの)とプログラミング、ジャンルとしては似てるんだけれども。
そうそう、ジャンルとしては似てるんだけれど。
作られたものをただこなす人と、自分で世界を作る人の能動性の差は見つめておいた方がいいんじゃないかなっていうのは、今の子どもたちを見てると思うところがある。
────論理的な思考と、トライ&エラーを繰り返す根気強さと。
いろんな側面がありますね。
【いろんな子どもの可能性を広げる場所に】
あとうちの場合、プログラミングっていうちょっと際立った、今までの習い事とはちょっと違う方向性だからか、発達障害を持ってる子もわりといます。
────へえ~~
その子たちも一緒に、自分の可能性を広げられるんではないかって。
合う合わないはもちろんあるんだけれども、自分の自己表現が苦手な子にとってプログラミングっていう世界が、ある種の自己表現の場になっているとすればすごく素敵だな、と感じています。
【面白がるから身に付く、楽しく遊ぶから集中できる】
────さっきプログラミングを「教育」と言いかけて「遊び」って言い直していましたが、教育とは思っていないですか?
もちろん教育にはなってるんでしょうけれども、自由の中で、自分でやりたいことを見つけてほしいっていう思いがあるかな。
あゆみちゃんがFORESTEでやってることと共通した思いだと思うんです。
────”教えられるもの”だったり”評価されるもの”というイメージをの活動とはちょっと違うかんじですか?
うん、もっと遊びに近くていいと思っていて。
ロボ団って "楽しいとか面白いっていう好奇心から生まれるものこそがその本人たちのすごい力になるんじゃないか" っていうベースがあって、そこはすごく共感しています。
だから「教える」とか「学ぶ」とかっていうよりも、面白がってくれる、楽しいからやってる感覚でいてもらえるのがいいかな。
教育やってるっていうのはちょっとおこがましい感じがしちゃいます。
新しい興味関心のプレイルームみたいなものを提供している気持ちでいます。
────学びって遊びと本当に密接なものですよね。幼少期からずっと。
そうそうそう。年齢が小さいからこそ言えることでもあるかもしれないけど。
────未知の世界ゆえに、プログラミングに対する親の期待度が高い時もあると伺ったのですが、期待度を感じた時に、何か保護者さんに対しては何かはたらきかけをしますか?
いや~~どうなんだろうね。
気負ってもしょうがないからな~~
ただ、スタッフはほんとみんな頑張ってくれてね。
楽しくて集中したいと思えるような環境作りをすごいスタッフが頑張ってくれてるところ。
うまくできなくて癇癪おこしちゃったりとか、ちょっと暴れちゃったりとかも時々あるけどね。
きっとそれだけ真剣なんですよね。
────絶対うまくやってやるぞという真剣さがあるんですね。
そうそう。
【思考し続けることが自分の道を切り開く力になる】
────集中したいと思える環境作りという話で、集中するのって普段の生活の中だと結構難しかったりして。
こういう場だと自分の力を発揮できるということがあるんだなと感じますね。
そうそう。
思考することは止めたくない。
ここも「Think」って名前をつけているんですけど。
基本はそこですね。
「想像力を高める」というキーワードを自分に出した時に、思考すること自体は諦めてはいけない気持ちはすごく強くなって。
────それは先ほどの「自分の道を切り開いていく」ところですね。
そうですね。
考える時に、いかに自分の経験値としての引き出しがあったりとか、そのものに対する自分の感情みたいなものを自分の中にちゃんと納得して持ってられるかということじゃないかなと。
【児童養護施設の子どもたちに、出会いと経験するきっかけを】
────では次は「みらたね」の話を。
おぉー。知っててくださったんですね~
────私2年前に引っ越してきてとにかく沼津のことを検索してた時に、最初に津賀さんの名前を拝見したのが沼津経済新聞のみらたねの記事でだったんです。
沼津経済新聞 2021.10.27
そうだったんだ。
────どんなことをされているんですか?
みらたねは、児童養護施設の子どもたちと社会の接点をちょっとずつ広げようという活動をしてます。
────これは会社の活動としてですか?
いえ、これは私個人の活動に近いですね。
私が経営者同士で経営を学び合う、中小企業家同友会っていうのに所属してるんですよ。
その会が5年くらい前から地域の児童養護施設の子供たちとの交流を持ち始めてたんです。
最初それに参加するような形でいったんですけれど、やっていくうちにだんだんあなたがやったら?みたいになって、じゃあやっちゃおうかなと。
────なるほどー。津賀さんがこの活動に参加したのはどんな思いからですか?
なんでやってるのかというと、、、
(しばらく考えてから)
ほんと人生無駄なしだと思っていて。
彼らの境遇は、彼らの責任で起きたわけでは決してない。
でもその境遇に陥ったことを自分の胸に置きながら暮らして生きていく子たちが結構たくさんいるのね。
自分で人生を切り開いていくための前を向ける力みたいなものっていうのを(つけるために)、社会的保護下にいる間に少しでも人と出会ったりいろんな体験をしたりしてほしい。
今は圧倒的に人との交流が少ないんですよね。
基本的には県外で保護された子が、下手すると自分がいる場所を親元に知らせることが危険と判断されてる子どもたちもいるし、兄弟で保護されても別々の施設で暮らさざるを得ない場合もある状況なんです。
例えば夏になったらおじいちゃんおばあちゃん家行くとか、親戚とどこ行くとか、習い事するとか、クラブ活動とかのような経験がほぼ全くないので、学校と施設の行き来だけをして高校までいる。
そして、高校出たら1人で暮らして1人で生計立てていくっていうことがほぼ決まってる状態なので、アルバイトしてみたりとか日々一人暮らしの訓練を受けたりしているんですね。
【大人が楽しんでいる姿を見せたい、子どもには反応を求めない】
みらたね作戦会議も楽しみながら
────経験が少ないとどうしても見える世界が狭まってしまいますね。
そう。だから、『大人も楽しげだね、地域で生きていく大人も結構楽しそうだね、仕事って結構面白いものなんだな、やりがいって結構感じられるものなんだな』とか。
そういうのを18歳で「さよなら行ってらっしゃい」ってしちゃう手前で見せ続けておきたい。
みらたねは、とにかくやる大人が楽しむっていうのを大前提で活動しようということになってる。
子どものためにという気持ちはもちろんみんな持ってるんだけれど、大人が集まってやーやー子どもに子どもにってしているんじゃなくてね。
子どもには何も求めない。
大人は楽しむ。で、子どもには何の成果も反応も、何かしらの何かを何も求めない。
その場を作った大人が楽しんで、ちょっと子どもを巻き込めればいいねっていう活動をしている。
────楽しんでね!!みたいなこともしないわけですね。
そうそうそう。
ただ、もう本当にこっちが楽しんでる。
(子どもには)ついてくる?くらいな感じ。
ただ自分で選択するっていうことをどうしても諦めざるを得ない状況(の子たち)でしょ。
だからなんかちょっと、小さなことを選んでもらったりはしてるかな。
────聞いていて、将来の仕事の知見が広がることもちろんなんですが、そういう枠組みを持ってくれてる地域の大人がいるんだなっていうのも、きっとなんかしら心に残っていきそうな気がします。
みんな敵じゃないよというメッセージというか。
そうそうそうそう。
本当お節介おばちゃんとおじちゃんを地域にいっぱい作ろうとしてる。
何かあった時にここには知り合いがいる、あの会社にはああいう人いたなとかってあるだけでも、ちょっと違うように思うんですよね。
高校を卒業し一人暮らしをはじめた青年たちに誕生日プレゼントを送る企画
今後は、最終的に雇用するところまで繋げていけたらいいなと思ってる。
君、うちで働いてみる?みたいな会話とかができるようになってくると、結果マッチングがうまくいかなかったとしても、”求められている”経験は何か彼らの中に残ると思っていて。
【続けていきたい、楽しいから】
────これからもこのまま続けていきたいなとか、こうしたいななどは考えていますか?
続けていきたい。自己満足のために笑
子どものためという使命感でやってるわけではないかな。
喜ばれたら、嬉しいじゃないですか。
────うんうん。
それが究極の幸福だなと。
ちょっと子ども喜んでたねとか笑い合える活動の仲間がいて。
幸せなことしかない感じかな。
だから、自分のためにやっていたいですね。
────津賀さんの話を聞いていると大人のエゴみたいなものが本当に無いなと。
私が楽しいから、とか。
いやいやそんな、ありがとうございます笑
────「楽しむ」「面白がる」というキーワードが色々なところで出てきましたね。
面白がるっていうのは、やっぱり1番。最高ですね。
そういうのがすごい顕著にわかる子どもはね。
面白いですよね。
────興味を持った瞬間に視野も広がりますよね。
知りたいって思えるとかね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
────サンディオスはデザイン会社、広告会社なんだけど、津賀さんの思考の幅がすごく広いなと感じました。頭の宇宙が。
でもそれがちゃんと1つのところにまとまっているというもの感じます。
Comments